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国立情報学研究所など :ICTを利用したサプライチェーンのCO2排出量削減手法

2009.08.29

 国立情報学研究所、日本ユニシス(以下、日本ユニシス)、凸版印刷は、共同研究「ICT利活用した物流・サプライチェーンにおける温室効果ガス削減技術の研究開発」により、総務省・地球温暖化対策ICTイノベーション推進事業(PREDICT)の平成21年度新規課題公募に応募し、採択された。同研究は、ICタグを利用した排出枠取引手法と、プログラム最適化技術を利用した物流トラックの経路の効率化によるCO2排出量削減手法を実現するとともに、実際のサプライチェーンで実証実験を実施するものである。

 今回の実証実験は、物流に対する排出量削減とICタグの活用で商流による排出枠取引を一体化し、実際の経済活動である物流・サプライチェーンに対する新しいCO2排出量取引技術を検証、実用化する。2008年から国立情報学研究所(研究代表者:佐藤一郎教授)が研究を進めてきたものだが、実用化に向けて日本ユニシス、凸版印刷と共同で実証実験を2010年度後半に実施する。

 ICタグを利用することにより、商品の原料調達から小売りまでのサプライチェーン全体での排出枠付き商品の実現と、簡単な排出枠取引やカーボンオフセットが容易になる方法を実現する。従来手法では排出枠の決済、つまり販売者から購入者への排出枠の移転は、販売者が購入者に成り代わってカーボンオフセットをするものであり、購入者に排出枠を移転させようとすると、電子的な認証方法を使った商品の購入者であることを証明する必要があった。

 排出枠量をICタグという形で商品に添付することで排出枠量を「見える化」し、商品の生産や物流で排出量が適正化されるようインセンティブを与える。またICタグを排出枠に関する有価証券のように利用できるようになることから、商品に添付された排出枠を簡単に商品購入者に移転するなど、ICタグの受け渡しにより排出枠取引ができるようになる。

 同研究では事業者間の排出枠取引だけでなく、一般消費者による排出枠付き商品の購入も視野に入れている。例えば地域自治会や学校が排出枠を表すICタグをベルマークのように収集・利用すれば、排出枠の公共利用に道を開く先駆けとなる。こうして広く排出枠への需要を喚起し、CO2排出削減を目指すものである。

 また物流トラック経路をプログラムとして扱うことにより、プログラミング言語のコンパイラ技術などで広く利用されるプログラム解析・最適化手法を、物流トラックに応用するもの。これにより、個々のトラックの集配経路の効率化や共同物流によるトラック台数の減少を実現し、効果的に物流でのCO2排出量を削減できる。

 2010年度後半に開始する実証実験では、凸版印刷が製造する紙製飲料缶「カートカン」を対象に実施する予定である。具体的には、同製品のための間伐材の調達、製紙、印刷、容器製造、販売からなるサプライチェーンで、ICタグを使った商品への排出枠添付の手法を検証するとともに、国立情報学研究所により物流におけるトラック経路の効率化を検証する。

 また日本ユニシスにより、物流、商流に加えて金流まで含めた排出枠移転の管理システムの実現及び既存排出枠取引との整合性の構築を図っていく意向である。具体的には、信託銀行などの協力を仰ぎながら、ICタグを排出枠に関する有価証券のように利用する場合を想定した商品販売者、購入者の口座管理、残高照会、移転の仕組みについて検証する。

 

※PREDICT(Promotion Program for Reducing global Environmental load through ICT innovation)...総務省による地球温暖化対策ICTイノベーション推進事業を目的とした競争的資金制度。国際的に喫緊の課題である地球温暖化対策に資するために、CO2排出削減省エネルギー化に貢献する情報通信技術(ICT)分野のイノベーションを創出し、研究開発を促進していくことを目的としている。