千葉大学とミッドスウェーデン(Mid Sweden)大学との間で2008年に
スタートした「The National Dish Package Designs Exchange Project」の、第2回となる学生による作品展示とそのプレゼンテーションが、今年(2009年)11月13日にスウェーデン大使館内の講堂で行われた。開催にあわせ、ミッドスウェーデン大学からは12作品を携えて、学生の代表2人と3人の教師陣が来日した。
千葉大学から大学院工学研究科デザイン科学専攻の渡辺誠教授と7名の学生が参加し、当時はあわせて15作品の展示と両校によるプレゼンテーションが英語で行われた。第1回となった昨年はミッドスウェーデン大学で行われ、プロジェクト名ともなっている、「National Dish Package Designs」が作品制作のテーマであった。
今回はそれに続く第2弾で、スウェーデンと日本とで誰もが知るディシュ・メニューとして「ミートボール」と「寿司」のパッケージ制作がテーマとして選ばれた。両校の学生がそれぞれ、相手国のディシュのパッケージを設計・デザインするもので、非常にユニークな試みといえる。実際のパッケージ制作では、さらに幾つかの条件課題が加わるかたちとなっている。
ミートボールでは、スウェーデンスタイルとして定番の蒸し芋(ジャガイモ)とジャム(lingonberry jam)を添え物として考えることや、寿司ではスウェーデンで有名な日本料理店「Take Mikado」のブランド展開やストアでのテイクアウト販売などが条件課題となっていた。そうした条件もあったことから、ミッドスウェーデン大のパッケージ作品はどれも、非常に高級感を訴求したデザインと機能が目立っていた。
一方、千葉大の3点のパッケージ作品はどれも、非常にシンプルな構造で素朴なデザインとなっていた。今回のテーマ設計からは、両国の文化や考え方の違いといったことは、あまりパッケージ作品に表れてこない。むしろ、両校の学生が現代おかれている暮らし環境の違いが如実に表れているように感じられる。
千葉大の学生はCVSやデパ地下、ケータリングという3つの販売チャネルの違いを意識して制作・デザインしており、いずれも"自らが買う"というのが前提となっているようだった。その点では、いずれもすぐにも使えそうな、非常に現実的なパッケージ作品となっている。反面、ミッドスウェーデン大の学生は、高級なブランド寿司ということもあって、デザインでは黒や白、ゴールドを基調色とした作品が目立った。
その点では、むしろミッドスウェーデン大の作品の方に日本の文化色が現れるかたちとなり、"日本の文化"をどんなイメージで捉えているかという意味では、スウェーデンの文化色といったこともうかがえる。日本をイメージする「桜」や「菊」などの花の文様がデザインに取り込まれていたり、特にユニークなのは"芸者"の髪結いをイメージした構造デザインなどである。髪留めのかんざしを、何と付け箸で表現しているのは驚きである。この付け箸については、どの作品でもデザインや機能でのキーファクターとして意識して必ず用いられており、まず日本人では意識しないところであろう。
また両校の作品とも、素材選択など環境配慮を重視した設計・デザンでは共通しており、特に千葉大の学生がアウトドアユースを意識したパッケージ設計に、食べ終わった後のごみの処理(持ち帰り)方法を取り込んでいたのは非常にユニークである。包装に印刷された絵柄を利用してもので、折り畳んでゆくと絵柄が変化するという"楽しさ"を付与している。これは国柄というよりも、むしろ女性らしい発想によるものであろう。
なお、同作品は11月19日までスウェーデン大使館内に展示される。