〈編集部発〉女性セミナー「ジェイサロン」開催
2010.03.26
ジェイパックワールド(JPACKWORLD)が主催するパッケージを"キー"とした女性だけの集いとなる、第1回「ジェイサロン(JSALON)」(学習・交流会)が2010年3月25日、台東区の竹本容器本社で行われた。"女性だけの集い"という新しい学習・交流会の試みなだけに、開催前から参加者の大きな期待が寄せられていた。当時は初春の冷たい雨にもかかわらず、様々な業種の、様々な立場の女性たちが集い、会場には春の陽光がさし、一足早く桜花がほころび始めた雰囲気だった。
まず、本誌編集アドバイザーの1人である竹原あき子氏により"花"と"パッケージ"を主題とした1時間ほどの講演が行われた。講演の直前までフランス・パリに滞在していたことから、花を通じて現地の雰囲気がそこはかとなくも伝わってきた。竹原氏の長年に渡るパリ滞在経験での定点観測と、その独自の視点から日本との文化の違いまで掘り下げた、フランスでの花き販売の魅力が伝えられた。
ビオもやしやビオキノコ、猫用ミニ、四葉クローバーミニ、イチゴポット入りなど、パリの花屋で売られる商品事例を多数紹介しながら、パッケージをうまくデザインでのアクセントとして用いていることが強調されていた。特に種の販売では、素人にも魅力を伝える上で"パッケージが鍵"として、「ラディス・エ・カプシーン」の発想が紹介された。種からはけっして伝わらない「未来にどんな花を咲かせるか」という、パッケージが未来の花との生活シーンを描かせる役割となっているという。
また花だけでの販売ではなく、"花にも衣装"といったアクセサリーやセット販売、庭や装飾、家具・インテリア、小物などをうまく使って演出されている。国内でも、サントリーが「青バラ」と香水のセット販売が始まるなど、花き販売にも大きな変化が現れつつある。"花にも衣装"が花屋の大きな魅力となることは間違いない。そして竹原氏は「パリの花屋には意思が店頭にある」という。例えば「うちは白を基調にする」といった売りたいものがハッキリとしているということ。
或る花屋では、長年変わらずに花束を透明プラスチックフィルムシートで包むだけ。それが、なぜかオシャレに映るという。ポリバケツにシートを入れて、水と花を挿すだけ、後はシートごと茎を束ねて縛る。お見舞いに病院に持っていけば、そのまま花瓶にもなるという。「なぜ、シートを使うのか」と、竹原氏はたずねたという。すると「作業が簡単だし、縛った時の不規則にできるシワの陰影が素敵でしょ」と、答えが返ってきたようだ。もちろんフランス語で、である。
最後に、この春(2010年)に話題を呼んだイギリスの「イノセント(innocent)」社が販売するPETボトル飲料で試みた社会貢献の1つが紹介された。スムージーのボトルのキャップに手編みのニット帽を被せて10万個が販売されたもの。売上げの1部が独居老人の支援に使われるというもので、あっという間に完売したようだ。会場に、ニット帽を被ったボトルが並べられると「かわいい」との声があちこちから上がった。最後に、竹原氏は「日本ほどパッケージの技術やセンスが優れている国は他にありません。どうか皆さん、自信を持ってください」とエールを送った。
◎女性らしい縦横な話題に春爛漫
第2部の交流会では、全員が自己紹介とともに現在たずさわっている仕事の内容などを報告し合った。業務内容や立場の違いからお互いに質問し合うシーンや、女性としての職業観など時間経過とともに話題は多岐に渡り、"女性だけの集い"としての特徴を十分に発揮した交流会となった。なかには、販売商品の問題点といった指摘もあり、「数週間で解決します」という心地よいやり取
りなどもみられた。
またユニバーサルデザインの話題では、「なぜ企業の利害を超えたスタンダード化が進まないのか」との質問に「それはつくる人の実感がないから」との答えで、「誰もいずれ更年期を迎えます。それを想像してほしい」と赤裸々な言葉が続いた。まさに、女性らしい"実"のある話に「まだまだ未開拓の需要がある」と納得が広がった。回数を重ねる毎に、こうした交流が深まっていけば、いずれ企業や立場を超えた次元で、何か新しい価値創造の商品およびパッケージが誕生するかもしれない。その時は、やはりジェイパック企画となるのだろうか。(笑)
「雨が降るにも意味がある」と、そんな言葉を聞いたことがある。「闇が深ければ深いほど、暁は近い」と、洋々と大海に注ぐ大河もその脈動の源流は闇と雨に身を包んでいるのだ。冷たい春の雨に包まれた開催にも、きっと大きな意味があろう。もしこの女性の集いの終始を男性が見たならば、NHK大河ドラマで福山雅治氏が熱演する、かの坂本龍馬の如く「日本の夜明けは近いぜよ」と言ったに違いない。