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ニュースフラッシュ

キリンビバレッジ:芽胞菌制御に貢献する「ナノサーチ技術」を開発

2010.10.28

 キリンビバレッジのコア技術研究所は、微生物細胞の微小細部を画像として可視化し、様々な物理的指標によりナノレベルで評価・解析する「ナノサーチ技術」の開発に成功し、その研究成果が、第20回「日本清涼飲料研究会賞」を受賞した。同技術研究所ではこれまで商品開発部門と連携して、よりおいしく高品質で安全な商品を提供していくための微生物制御をはじめとした、品質保持技術の研究開発や技術開発を進めてきた。「ナノサーチ技術」開発もその一環となるものだ。
 清涼飲料では一般的に、殺菌耐性が高く検出が困難といわれる芽胞形成細菌(以下、芽胞菌)の制御は、微生物保証上、最も重要な課題の1つである。しかし芽胞菌は菌種により耐性が異なる上、検出が困難なため、清涼飲料の商品開発時には適切な殺菌条件の設定に数週間以上の時間がかかっていた。また新たな芽胞菌が発見されても培養が難しいため、耐性の確認に長時間を要する。「ナノサーチ技術」の開発により、その芽胞菌の耐性の確認が、簡便かつ短時間で判断することが可能となる。
 生きた微小な芽胞菌の硬さはこれまで、直接測定する手段はなかったが、ナノレベルまで測定が可能なナノサーチ顕微鏡により、測定が可能となったものだ。具体的には、ナノサーチ顕微鏡に搭載している微小な探針の先端を芽胞菌に近づけたり接触したりして、探針と芽胞菌の間の力学的・電磁気的相互作用を検出し、それを画像化・信号化することで芽胞菌の硬さを測定する仕組みである。
 この方法による複数菌種の測定結果から、芽胞菌の硬さとその菌の耐熱性に相関関係があることが分かった。これまでは、長時間を要する培養と加熱試験でしか芽胞菌の耐熱性を判断することができなかったわけだが、ナノサーチ顕微鏡を利用する「ナノサーチ技術」により、芽胞菌の増殖・分裂を待たずに1個の芽胞菌から短時間で、細胞を直接測定して耐熱性を判断するということが可能となったものだ。
 「ナノサーチ技術」の応用によって、硬さをはじめとした様々な物理的指標を微生物制御に利用できる可能性が生まれる。同研究所では今後、芽胞菌制御の条件を環境に合わせて迅速に設定する技術への応用や、様々な微生物の性質の解明などにも取り組み、品質保持技術を広範囲に発展させていきたい考えである。

※耐熱性を有する芽胞(胞子)を形成する細菌。乾燥、熱など悪条件に耐え、再び環境条件がよくなると発芽し分裂増殖する。