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ニュースフラッシュ

《編集部発》被災環境下の運命共同体

2011.03.15

 東京都知事の石原慎太郎氏の「津波は天罰」との発言が非常に問題になっているが、その真意がどこにあるのかを考えるべきで、言葉じりに終始するのは愚かである。今、大事なことは頭で考えることよりも、心で感じることである。むしろ「東北地方太平洋沖地震」はそのことを教えてくれている。その理解は、大衆の方が早いし、いわば被災地の方々の方が早いに違いない。
 片親を震災で失い、食べるものも、暖をとることもままならない状況下で、「今までが、いかに恵まれていたかがよく分りました」と語る、まだあどけない少女がいた。「まず先に語る言葉が、他にあるだろう」とそう思うだろうが、感性は赤裸々な現実を正直に捉えている。そのことを忘れてはならないと思う。こんな仏説がある。
 毒矢を受けた1人の重傷患者を前に、まず毒の種類を議論している医者がいる。その間に毒は全身へまわり、患者の命を奪うというものだ。人命にかかわる一刻の時を争う状況である。大事なことは議論ではなく、その毒矢を抜くことは自明のはず。だが、それができないのは何故か。原子炉事故にしろ、計画停電にしろ、現状の対応に接していて「これとは違う」といい切れるだろうか。
 今回の震災では、地方に点在する工場の被害も少なくない。近年、生産拠点の集約を進めてきただけに、プロダクトマーケットへの影響も大きいことは実感ずみであろう。その点では、包装産業は運命共同体である。あらためてパッケージが欠けても、モノは流通しないことがよく分る。運命共同体のよきパートナーとして、お互いの痛みを分かち合い、必要不可欠な需要に応えようとする姿が理想である。
 いや当然であってほしいものだ。だが、残念なことにこうした"緊急事態"にあっても、いつも通りの考えで、分別なく無理難題な要求を押し付けようとするところもある。「最も大変なことは、自分のことしか考えない人たちと付き合っていかねばならないことです」とはナイチンゲールの所感である。被災した工場などの現場では、まだ余震が続く危険な状況の中でも、懸命に復旧作業が進められている。
 その上で、まだスケジュールのメドが立たないというのが現状だ。それは、無理難題を持ちかける一部の我慢偏執のやからに応えるためではない。1日の糧を待ちわび、それを必要とする人たちに応えんとするためである。ブランドオーナーであれ、小売流通であれ、包装サプライヤーであれ、同じ環境下にさらされた運命共同体であり、その目的は"命にかかわる1本の毒矢"を抜くことであることを忘れまい。またそれだけの自負を持ってほしい。