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ニュースフラッシュ

《編集部発》詩「人間王者実存の証」

2011.03.18

大地が動いた。
命が揺れた。
命を根底から激しく 
激しく揺さぶった。
有情も、非情もすべてが
その根を断ち切られるほど
激しく 激しく揺さぶられた。

刹那に襲う轟音は
「お前はまだ生きたいのか」と
容赦なく生死の選択を迫った。
余りにも、激しき選択に晒され
誰もが無我夢中
目前の現実を鋭敏に捉えうるのは
人間生来の本能だけだ。

その選択に従い
次の刹那に、真っ黒い波がすべてを呑み込んだ。
何もかもが呑み込まれたかに見えた。
果たして、連れ去られてもの
だが、傷つきながらも生き残ったもの
「何が、その明暗を分けたのか」ではない。
生も死も、いずれも自らが選び取ったものなのだ。

「火は焼照を以て行と為し
水は垢穢を浄るを以て行と為し
風は塵埃を払ふを以て行と為し
大地は草木を生ずるを以て行と為し
天は潤すを以て行と為す」と仏典にはある。

それは、ひと度は悲しい別れにも見えるが
生も死も、命のひとつのかたちに過ぎない。
目には見えなくなるとも命は
火となり、水となり、風となり、大地となって
残した分身の命を支えている。
また新しき命の母胎となり、未来を育まんと
自らの意思で命のかたちを変えたのだ。
それは、まさしく"業"を兼ねた願い。
「願兼於業」と呼ぶようだ。

いにしえの聖賢たちも、
身に余る巨大な苦難を前にして
「今年の世間を鏡とせよ
若干の人の死ぬるに
今まで生きて有りつるは
此の事にあはん為なりけり」と叫んだ。

ゆえに、先き往く命を悲しむことなかれ
それは、自らの願いを業として果したのだ。
その自覚に至りて
「今まで生きて有りつるは」との
生き残ったものの、自らにしか果たしえない
その尊き使命に、今日一日を生き抜くのだ。

北国の被災地で数十時間ぶりに救出された
一人の無名の翁(おきな)は叫んだ。
「チリ津波の時も経験してっから、大丈夫。
 また再建しましょう!」と。
その色心の優しい声
深くシワを刻んだ不撓不屈の相好。
再び地上を照らす日の光を浴びて
慈顔の上にあらわれた会心の笑み。
そこには、誰人の心をも鼓舞して止まぬ
金剛不壊の魂が光っている。

「命は生死を超えて今もつながる」との確信の上に
あらゆる苦難と悲哀を乗り越えて
再び建設の力強い槌音が、この大地に響き始める。
それは、誰もがまだ見ぬ世界
誰もが求めて止まぬ世界
その未聞の建設であり
"人類史の新しき朝を開きゆく"
この聖業に挑み続けている
偉大な人間王者の実存の証である。