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《編集部発》詩「人間桜」

2011.04.08

「国破れて 山河あり
城春にして 草木深し」
唐の詩人・杜甫「春望」である。

大自然の突如とし た猛威に
一瞬に廃墟と化した里にも
今、春が来て
うららかな陽光を浴び
開花の時を迎えたソメイヨシノ
すべてのものを破壊し、
根こそぎなぎ倒したかに見えた
しかし 大地に深く這った根は
断ち切ることはできなかったのだ。

ただ  人心が落ちつくのを待ったか。
それとも 人心に似て
大地の揺れと大波の寄せるに
肝を消して 体内時計を狂わせたか。
桜花の饗宴は、例年に遅れた。

南西から 東北へと
列島をつなげゆく桜(はな)綱は
人と自然、人と人との生命を結ぶ
大宇宙が秘めた実存する力
おお 人間よ! 人間桜よ!

人間こそが
そ の最大にして、
最高の体現者でなければならない。

東北 の長い厳冬を耐えて
春を待って、爛漫と咲き薫る桜花のように
人間もまた、自らの咲く「時」を知る。
数多(あまた)の大切なものを失い
すべてが瓦礫と化した一面の大地を
両の足で踏みしめた時、
傷ついた五体をふるわせ
ふつふつと 生命の内奥から
涌き出ずるものは何か。

「人 間はかくも無力で、何と小さき存在」との
圧し掛かる問いを、たやすく押し退けて
無限の光彩を放ちながら
希望の明日を照らし出す

「人間の秘めたる力は、こんなものではない」
それは、慢心や驕りと似て非なるもの
人間の本源から涌き出る
祈りにも似た欲求である。

「万物の霊長たる人間として の
真の目的を達成したとは
私にはどうしても思えない」と
明治の教育者・福沢諭吉は叫んだ。
今こそ、人間としての
偉大な振る舞いと団結の力で
人類がこれまで成し得なかった
真の目的である理想郷を
東北の大地に築き上げるのだ。

人 間の弱さや醜さを晒した
人類史の恥ずべき負の遺産
"戦争と暴力"とはもう決別するのだ。
人間の、人間たりえる体現は
"平和と対話"にこそある。

フランスの詩人・ゲーテは歌った。
「人間は気高くあれ
情け深くあれ 優しくあれ
そのことだけが
我らの知っているものと
人間とは区別する」と。

 "戦争"ではなく 、"天災"あったことが
"原爆"ではなく、"原発"であったことが
目に見える敵ではなく
心の内なる敵であることが
浅はかな人知では及び難い
「神の采配」なのかもしれない。

なればこそ 乗り越えられないはずがない。
解決できない問題などない。
神が人間への信頼に託した
大きな試練であるからだ。

 「退転なく修行して
最後臨終の時を 待って御覧ぜよ」とは仏言。
あまりに厳しき現実の中で
悠然と咲き誇る桜花を見つめて
今、此処の場所で
涌き出ずる生命の躍動が
必ずや"人間桜"の開花と勝利を生む。

「能く毒を変じ て薬と為す」とは
その勝利を約束した
生命不変の原理である。

ゆえに 全魂を傾け
全霊を尽くして 
人間としての真価を
思う存分に発揮するのだ。
そして 世界が見つめる中
後世に残すべき
偉大な人間桜の金字塔を
厳然と打ち建てるのだ。