大日本印刷:植物由来フィルムを用いた包材を拡充
2011.08.19
大日本印刷は、植物由来の原料を使用した包装材用の透明蒸着バリアフィルム「バイオマテック IB-PET」を開発した。新バリアフィルムは、同社が開発した植物由来のPEフィルム「バイオマテック PE」などと貼り合わせることで、水蒸気や酸素に対する優れたバリア性を備えた包装材に加工することができるものだ。同社では2011年9月から量産をスタートする意向で、バイオマテックシリーズを利用した包材で2015年度には200億円の売上を見込んでいる。
同社は、持続可能性・生物多様性に配慮した包材の実用化を積極的に推進しており、その一環として2011年5月からすでに植物由来の原料を使用したPETフィルム「バイオマテック PET」の量産を開始している。今回は、バイオマテックPETに水蒸気や酸素の透過を抑えるバリア機能を透明蒸着によって付与した「バイオマテックIB-PET」を開発したもので、植物由来の透明蒸着バリアフィルムは国内で初めての開発事例となる。すでに量産に向けて国内外の企業へサンプル出荷を開始している。
包材の内面層に多用されるPEフィルムについても、植物由来の原料を使用したバイオマテックPEを開発済みで、採用も決定している。これにより、軟包装の包材を構成する主要なプラスチックフィルムでは植物由来フィルムのラインナップが揃い、高いバリア性が求められる食品や医薬品、工業製品などの包材への利用が可能となる。
バイオマテックシリーズは、石油由来原料の一部を植物由来原料に置き換えることで石油使用量の削減を実現すると同時に、これまでの汎用樹脂と同等の物性と加工適性を有している。同シリーズのフィルムを組み合わせて製造する包材は、石油使用量を最大50%削減するとともに、焼却時のCO2排出量も最大50%削減できる。一般的に植物由来フィルムは、石油由来フィルムに比べて高価だが、バイオマテックシリーズを用いた包装材は製造コストを2〜3割程度の上昇に抑えている。
同社では食品や飲料、日用品のメーカーなどに供給している包材を順次バイオマテックシリーズに切り替えていく予定であり、海外メーカーの関心も高いことから海外市場への展開も積極的に推進していく考えだ。将来的な石油由来フィルムと同程度の価格となるようコストダウンの取り組みを継続するとともに、紙容器や成形品への展開も図るなど、バイオマテックシリーズの普及を促進していく。
さらに環境負荷の低減に多角的に取り組んでおり、製品のライフサイクル全体でのCO2排出量の把握に加えて、原料となるサトウキビの栽培による生態系などへの影響に関する研究「バイオマテックPETのLCA」を東京都市大学環境情報学部准教授の伊坪徳宏氏と共同で進めている。研究成果を、バイオマテックシリーズの製品開発に活用するとともに、生物多様性への影響を定量化するという活動にも積極的に取り組んでいる。
※1)バイオマテックPET:包材の最表面の印刷層に用いられるフィルム。原料の約30%を占めるエチレングリコールを、石油由来からサトウキビ由来のバイオエタノールに置き換え、石油使用量を約30%削減。
※2)バイオマテックIB-PET:新製品で、包材の中間層に用いられる高いバリア性を備えたフィルム。DNP独自の透明蒸着技術を用いて表面に透明な薄膜(バリア層)を形成し、水蒸気や酸素による内容物の劣化を防ぐ。
※3)バイオマテックPE:包材の内面層に用いられるフィルム。サトウキビ由来のPEを使用し、石油由来の製品に比べて石油の使用量を50〜60%程度削減。密封性や強度、風合いを高めるフィルム。