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サッポロビール:宇宙での長期保管・輸送実験に成功

2011.09.06

n_20110906_01.jpg サッポロビールは、宇宙環境での食料自給を目的とした研究を、ビールの原料である大麦を使用して、岡山大学資源植物科学研究所准教授の杉本学氏(専攻:細胞分子生化学)と共同で行っている。ロシア科学アカデミー生物医学研究所(IBMP)が国際宇宙ステーションを利用して取り組んでいる研究に参画している岡山大学が行う研究の一環であり、月や火星での宇宙基地で人類が生活することを想定した、食料としての大麦の長期輸送・保管の耐性実験だ。
 今回は、国際宇宙ステーションの船外で、大麦種子2g(50粒)を金属容器に13ヵ月間(2007年6月〜2008年7月)保管する実験と、その後、地球上での栽培実験(2008年11月〜2010年5月)を行ったもの。保管実験では、船外での宇宙放射線、太陽光、真空、微小重力、寒暖差110℃(−20〜90℃)という、地球上とは全く異なる過酷な環境下での大麦種子の品質や遺伝子等の変化について調査し、問題がないことを証明した。
 また地上での栽培実験でも、同様に生育した大麦に変化はなく、宇宙で保管した米やトウモロコシが異変をきたすという事例と比較し、大麦の宇宙での耐性の強さを証明できたもの。研究成果については、2011年9月15日発行の「Advances in Space Research」誌に掲載され、日本宇宙生物学会第25回大会(9月30日、10月1日、横浜国立大学)で発表予定である。
 同社では今後も、宇宙環境での耐性の強い大麦の自給自足が可能な穀物としての可能性を広げるため、岡山大学の研究に協力していく考えである。
 
【これまでの経緯】
2006年:国際宇宙ステーション船内(ロシア実験棟)での5ヵ月間の保管実験と栽培実験(いずれも世界初)に成功。
2007年:宇宙で保管された大麦種子の地上での栽培に成功(世界初)。
2008年:宇宙で保管された大麦を地上で増殖させ、それを原料としたビールを試験醸造(世界初)に成功。ビールの品質、香味面でも問題が無いことを証明した。
2009年:世界で初めて商品として数量限定発売(商品名「サッポロ スペースバーレイ」)。
 
※)ビール用大麦:サッポロビールが開発したビール用大麦品種「はるな二条」、
宇宙環境は宇宙放射線や太陽フレア、太陽光、太陽風、微小重力、真空、急激で大きな寒暖差があり、DNAや細胞に損傷をあたえ変異、生育阻害、死滅をもたらす可能性がある。