日本水産:業務用食品開発にみる新たな兆し
2012.02.02
日本水産は、2012年の春・夏新商品発表会を開催した。新商品・リニューアル商品を合わせて74品で、「健康」「新しい提案」「内食化への対応」をキーワードにしたものだ。同社では、開発の上で"生活者基点"を重視しており、その点では女性の開発者が確実に増えてきている。74品の中でも、本誌が注目する商品では女性の開発者が目立つ。
なかでも今回は、業務用や通販商品での取り組みが目に止まった。業務用スイーツもその1つだが、クチーナ・カルダブランドでのドルチェシリーズの2品である。浅い紙カップに入った冷凍の「パンプディング」と「チーズケーキ」で、同じブランドで展開するグラタン&ドリアの製造ラインと容器を利用したものだ。非常に完成度の高いスイーツで、2012年3月には小売・流通のチルドデザートコーナーにPBとして並ぶということである。
これを開発したのは、業務用食品部業務用第一課の足利友里江さんで、「どうしても作りたくて!」と、同社の関係者を口説き落としたようである。同社としての"スイーツ熱"というよりも、彼女が発する"熱"がこもった冷凍スイーツといえる。パッケージは非常にシンプルだが、"ニッスイの"スイーツが今後どう化けるのか期待される。
これが、「なぜ生まれたのか」については本誌で触れたいと思う。かつて、ニッスイが初めて開発した冷凍食品の「焼きおにぎり」を取材した経験を想起させるが、新たな需要の創出といったことは案外、本業から離れたところで起こるものかもしれない。それが、商品開発のおもしろさでもあろう。どちらかとえばパッケージも後からついてくるケースが多い。
その点では、水産をルーツとする日本水産の商品パッケージはここ数年、常温・冷凍問わずに洗練されてきた感である。もう1つ紹介したのは、これぞ本業の定番である魚肉ソーセージである。やはり冷凍の業務用で、「おさかなソー」として1本とハーフ(1/2)、クォーター(1/4)、スライスの4タイプを揃えている。
魚肉ソーセージといえば、日本生まれの日本育ちの常温食品である。その形状や流通温度帯、保存性などはパッケージングであるケーシング技術に由来するといっても過言ではない。それを、冷凍流通させることでケーシングを外し、外食店舗などでの調理でケーシングをむく手間を省いたものだ。もちろん4タイプは用途に応じてカットする手間も省いている。
いうまでもなくソーセージらしさは大きく形状に依存する。ケーシングがなく、どうしてその形状を成形するのかというと、製造上でトコロテンみたいに押し出しながら出てきたところをボイルして固めるという。単純にいえば、蒲鉾の製造に似ているといえようか。言い換えれば押出口の形状によって、魚肉ソーセージの形状も自由になるということだろう。
業務用だけに今後の用途開発は広がりそうである。国内の冷凍技術は非常に進化しており、解凍後の味や食感さえ出来立てとそん色ない。あとは流通過程での厳格な温度管理ができれば、業務用に止まらず市販用の冷凍魚肉ソーセージが主流となる日も遠くないかもしれない。もちろん常温ならではのメリットもあるわけだが、ケーシングのない"魚肉ソーセージ"というのは包装史上の1つのエポックとなりうるものである。