凸版印刷:色素を使わない構造発色シート
2016.08.22
凸版印刷は、顔料・染料などの色素を使わず、色を示す構造発色シート「モルフォシート」を開発した。光の反射と散乱を制御するナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術の融合によるものだ。偽造防止やブランドプロテクションなどのセキュリティや屋内外でのプロモーションツール向けの製品として、2017年度中の実用化を目指すものである。
これまで培ってきたナノ構造をコントロールする技術で、具体的にはナノインプリント技術で形成したナノ構造上に、金属薄膜を多層に成膜することで光の反射と散乱を制御するものだ。このナノ構造と多層薄膜により色を表現することが可能となる。
構造や多層薄膜での物理的相互作用で発色するため、顔料や染料を使用した従来のものと比較して太陽光や蛍光灯などの紫外線による褪色がなく、鮮やかな色が長持ちする。
欧米を中心に「バイオミメティクス」といわれる、生物の持つ優れた機能や原理を模倣する技術分野が注目されている。2015年12月にはバイオミメティクスに関する国際標準ISOが制定され、設計や製造などのプロセス標準化の検討が始まった。
日本でも文部科学省の新学術領域として「生物規範工学」が採択され、生物学・史学・工学・情報工学の連携したバイオミメティクス関連の研究・技術開発が進められている。国内外の大学や研究機関だけでなく、民間企業でも研究が行われ、産業界の新しい刺激と発想をもたらす機会として大きな期待が寄せられている。
とくに日本では、玉虫、モルフォチョウ、カワセミ、孔雀など生物の織り成す構造色が好まれ、これら構造色の再現は長年にわたり研究されている。そうした背景から、同社ではモルフォチョウの瑠璃色を表現する構造に着目し、コア技術のナノ構造設計技術と多層薄膜形成技術を活用することで、瑠璃色を忠実に再現することに成功した。
ナノ構造の形状とサイズおよびランダムパターン配置の設計で、表現する色と視野範囲を自由にコントロールできる、広い視野角を実現したものである。またフォトマスク製造で培った薄膜形成技術で、ナノ構造上に多層薄膜を精密形成でき、反射吸収する波長域を狭めることが可能となったことで、発色の均一性も高められる。
ナノインプリント技術ではフィルム上にナノ構造体を大面積で形成することができる。同社では今後も、バイオミメティクスを活用した技術開発を進め、多彩な機能を持つ製品などに幅広く展開していく考えである。
(参照)https://www.youtube.com/watch?v=2U5ABzt_Rbk&feature=youtu.be