《メッセデュッセルドルフ》欧州プラスチック産業の動き
2016.09.20
1)欧州では、Nestlé社の「Nespresso」をはじめ、数多くのカプセル式コーヒーメーカーが急速に普及してきた。マシンの利点はいうまでもなく、淹れたてのおいしいコーヒーが簡単に飲め、かつ多様なニーズに対応するものである。
他方、カプセルの廃棄ごみは環境に負担をかけることも事実だ。ドイツでは、コーヒー・カプセルのごみだけで、年間4000トンにも上るという。また、Nestlé社は、年間に80億個のコーヒー・カプセルを販売し、800万kgのアルミがゴミとなっている。コーヒー粉が充填されたアルミとプラスチックからなるカプセルは、リサイクルが難しいことも環境負荷の要因である。
南ドイツのフライブルクに拠点があるOriginal Foods社は、2016年のBIOFACH展でアルミを一切使わない、バイオプラスチックのみからなるコーヒー・カプセルを展示紹介した。同社によれば、Nespresso向けのこのカプセルは、素材の90%以上が、12週間でCO2と水に分解されるとのことだ。これが普及すれば、環境負荷を最小限に抑えることができる。
[写真]バイオプラスチックのみからなるコーヒー・カプセル(Original Food社プレス・リリース)
[出典]2016年2月10日付 www.packaktuell.ch、2014年1月8日付Welt紙
2)海洋漂流ごみ、なかでもプラスチック由来のものは、残念ながら毎年増加傾向にある。ドイツの専門誌「Verpackungs-Rundschau」によれば、年間およそ800〜1000万トンものプラスチックごみが、新たに海を汚染しているという。太陽光、紫外線、風や波などにより、プラスチックは次第に劣化・崩壊し、マイクロプラスチックと呼ばれる状態となる。
なかでも、5mm以下のものは魚が誤食することがあり、結果として魚を食す人にも影響が及ぶ。海に漂うプラスチックの量は、海で泳ぐ魚のすでに1/3に相当する。プラスチックごみ減少は、早急に対応策を練るべき最も重要な課題の1つとなっている。
欧州では、すでに取り組みがスタートし、具体的にはドイツで環境省と流通業界で「これから先10年間でビニール袋の使用を半分にまで減少させる」という合意書を締結した。店舗などのレジで渡されるビニール袋を有料とする。
料金は、わずか0.05ユーロ(6円相当)からで、無駄な利用を減少させる効果が見込まれる。実際、衣類販売大手C&Aの店舗では、ビニール袋の利用を50%以上削減させることに成功した。
[出典]2016年4月27日付FAZ紙、同年1月28日付Verpackungs-Rundschau誌
3)Bayer社から分離・独立した Lanxess社長のツァハート(M. Zachert)氏は、あるインタビューで、注視する全体的なトレンドとして次の3点を挙げている。(1)原料の価格変動、(2)中近東など、今まで石油をはじめとした原料を提供していた企業が、利益マージンが高い加工に注力、(3)中国企業による輸出増、外国企業の買収など、国際ビジネス活動の強化の3点である。
中近東に関しては、同社の合成ゴム事業を、Saudi Aramco社との合弁会社に譲渡したこともあり、サウジアラビアの企業を将来的に売却する可能性も完全には否定していない。一方、178年の歴史を持つ、ドイツのKraussMaffei社が、中国の国営企業ChemChinaに買収された。
ChemChinaにとっては、「タリアのタイヤメーカーPirelliを70億ユーロ(8050億円相当)で買収」次ぐ、有名欧州企業の事例となる。423億ユーロ(4.86兆円相当)の売り上げを実現する中国企業にとって、9億ユーロ(1035億円相当)は、その2%ぐらいだが、欧州企業の優れた研究開発と技術へのアクセスがカギであることは間違いない。
[出典]2016年7月28日付China Daily紙、2016年6月1日付、2016年1月12日付Handelsblatt紙
4)Lanxessと同様に、Bayerから分離したCovestro社(2015年8月31日までは、BayerMaterial Scienceとして活動)は、できるだけ早く独立しようとしている。現時点で、BayerがCovestro社株式の64%を所有しており、遅くとも2018年までに、残り全てを売却する意向を発表している。
Covestro社は、Bayerからの「のれん分け」にあたり発生した、21億ユーロ(2415億円に相当)程度の借金を完済できたようだ。その主な要因は、中国での好調なビジネスであり、考えてみると業界再編は合併・買収だけではなく、ビジネス分担と分離も重要なポイントかも知れない。
[出典]2016年7月27日付、2016年6月25日付www.rp-online.de記事
(※)「欧州プラスチック産業NEWS」から抜粋・加筆したもの。