日本包装技術協会:第54回全日本包装技術研究大会
2016.12.09
日本包装技術協会(JPI)は2016年11月29日と30日の両日、京都の国立京都国際会館で定例の全日本包装技術研究大会(京都大会)を開催した。今回で54回目となる研究発表大会では輸送包装部会と食品包装部会、環境包装部会、化粧品包装部会、生活者包装部会、包装資材部会、電気機器包装部会、医薬品・医療機器包装部会、パッケージデザイン部会の計9部会で78件の発表が行われた。
全国各地から数百人を超える会員が参加し、熱のこもった全プログラムが盛況裏に終了した。同研究発表大会は、全国のJPI会員を対象に、包装・流通に関する研究の成果や現場での改善や合理化の実績を発表し、産業界の相互の交流を深めることを目的に年1回開催されるもので、関係機関からも高い評価がある。
大会初日の式典で、主催となるJPI関西支部長の大坪清氏は開会挨拶のなかで、6兆5000億を超える市場規模と日々の生活に欠かせないインフラといえる包装産業は「日本の基幹産業の1つと位置づけされる」と強調した。また単に「パッケージ」とは訳せない「包装」との言葉に、日本独自の文化が表われていることにも触れた。
そのあと、JPI専務理事の越野慈夫氏から2015年の前回大会(福岡大会)での優秀発表入賞者17人の表彰式が行われた。また特別講演として、特定国立研究開発法人理化学研究所理事長の松本紘氏から「日本における科学技術イノベーション」とのテーマで講演があった。
初日の午後から2日間にわたり行われた事例発表は、いずれも包装らしい現場の課題と向き合った内容で、端的にいえばその課題解決をありのまま発表するものと、そこから研究テーマとして普遍的な課題を導き出すものとの大別できる。
どちらも非常に興味深い内容ではあるのだが、現場の課題解決に終始すればどうしても選択肢が限られ、研究の幅はかなり狭くなってしまう。また一方で、普遍的な課題を導き出すには「仮説」と「検証」が不足しがちになるように感じられた。
ただ年々、発表者および参加者のなかの女性比率は増えているように感じられることと、発表後の質疑研修が増えてきたことは間違いない。本誌などは、もとより研究発表などは発表内容だけで完結するものではなく、質疑の充実があってのことであると思っている。
もちろん、それには各部会のコーディネーターの役割が重要となるわけだが、むしろ「コーディネーター」であるべきではなく、「ファシリテーター」であってほしいと思う。発表者はもとより参加者もだいぶ若返っているようで、質疑の質や熱もだいぶ上昇しつつあるように感じられた。
今後に期待を込めて欲をいうならば、発表でも質問でもさらに視野を広げて(企業としてではなく)自らの考えをより深めていくことができれば、包装の未来を開くすばらしい研究大会となるに違いない。そうした潜在力は十分にあるものと思う。
次回は名古屋大会(2016年11月16日・17日、名古屋国際会議場)での開催となる。以下に今回選出された優秀発表の17件を紹介する。
第53回全日本包装技術研究大会(福岡大会)「優秀発表者一覧」
【輸送包装部会】(8件)
「振動試験機による包装貨物の跳ね上がり再現」あいち産業科学技術総合センター
「実輸送データに基づく、振動試験条件の導出に関する考察」アイデックス/神戸大学
「空港内オペレーションの実際と振動・衝撃加速度データ」エクサーチ/日本貨物航空/森松産業
「海上および陸上輸送における設計システムの運用と固縛技術の確立について」山九
「"感嘆"開閉BOX「PoN-PA」の開発」TOTO
「超低温コールドチェーンマネージメント」日立物流
「小容量用トレイ『Sロックトレイ』の開発」レンゴー
「店頭陳列に優れた包装形態「リテールメイト」の開発事例」レンゴー/味の素
【食品包装部会】(3件)
「3Dプリンターを活用したプラスチック製ミル付きキャップの開発」ハウス食品グループ本社/吉野工業所
「取り扱い性を考慮したブルガリアドリンク容器の開発」明治
「新規形態包材採用による製造ライン仕様及びライン制御の検討」理研ビタミン
【環境包装部会】(1件)
「ワンウェイ用減容ボトルの開発」花王
【生活者包装部会】(3件)
「触動作センサーを活用した「使いやすい』パッケージ開発について」大日本印刷
「狙つたところに吐出しやすい『洗口剤用下向きノズルポンプ』の開発」ライオン
「台所用洗剤『CHARMY Magica』の開発」ライオン
【化粧品包装部会】(1件)
「シェア向けアイシャドウ容器・道具の開発」花王
【医薬品包装部会】(1件)
「乾燥条件下に適用可能な脱酸素包装材料の開発」三菱ガス化学