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World View

マーケティングを志向した国内花き産業の構築

松島 義幸氏

日本フローラルマーケティング協会/専務理事

〈プロフィール〉1970年にキリンビール入社。エンジニアとして従事し、設備開発で「コーティング装置」(特許、社長表彰)、「ビール濾過機」(実用新案、社長表彰)等の実績をあげた。その後エンジニア部門の分社化に携わり、企画、営業に転じた。台湾キリンでは飛躍的に売上を伸ばし黒字体質の経営基盤を作ったとして、1995年度のキリン経営大賞(社長表彰)を受賞。1996年キリンビバレッジ社に移り、上海錦江麒麟飲料食品有限公司の総経理として新合併会社を立ち上げた。2000年9月品質保証システム再構築のプロジェクトリーダーとしてキリンビバレッジ社に戻り、同年11月キリンビールに復帰。2001年1月アグリバイオカンパニー社長に就任。2006年3月退職。同年5月JFMA専務理事就任。同年8月MPSジャパン社長に就任。

---- 昨秋来の世界的な経済危機に晒され、国内では近年ドラステックに進んでいる人口などの需要構造の激変ぶりが大きく浮き彫りとなりつつあり、様々なマーケットにその影響といったものがハッキリと現れ始めています。花きマーケットではなおさら、現今のような景気後退の影響は受けやすいかと思いますが、将来的な国内マーケットの展望に立って、こうした人口構造の変化といった影響などは大きいと思われますか。

松島)非常に深刻な問題としてとらえ現在、様々な方策を検討しながら、すでに実施に向けて取り組みを始めているものもあります。ご承知のように、これまでの日本での花き需要は法人用の消費が支えてきたといっても過言ではなく、その点では景気後退の影響はかなり大きいといえます。ですが、それ以上に花きマーケットの10?20年後といった将来を展望すると、人口構造の急速な変化は需要の減退に大きく影響するものです。他の先進諸国と比較しても、日本での個人消費(消費金額全体の30%)は非常に低く、切花の購入では10人に4人というのが現状です。その内の約40%が「仏花」としての購入ですので、いかに花きが日本人の生活から離れているかが分かります。ましてや切花を購入する主力世代は50?70代で、年代が下がるにつれて購入人口や金額は確実に減少しています。いうまでもなく、私たちの幼少時に比べ、自然と身近に接したり、生け花をするというような、花きと親しく接する機会がほとんどなくなっています。そうした経験を持たない人が、例えば切花を購入して家で飾るようになるとは思えません。つまり、このまま放置していれば国内の花きマーケットは急速に縮小していくことは間違いありません。こうした現状を認識して、業界を挙げて「花育」に力を入れ始めました。「花育」では「花を通じて生命の尊さを教える」という狙いもありますが、私はまず花に触ってもらって、花の魅力(すばらしさ)をダイレクトに伝えることが大事だと思っています。

---- 確かに経験が大事であり、様々な経験を幼少時代にさせることが教育の役割でしょう。かつて読んだ「キャッチボールを1度もしたことがない子供は、野球の選手になりたいとは思わない。ある段階までは、いやいやでも教えていかなければいけない」との山崎正和氏(評論家)の言葉を思い出します。「花を通じて生命の尊さを教える」ことは政府に任せるとして、冒頭で「実施に向けて取り組みを始めた」と話されましたが、「花の魅力を伝える」具体的な取り組みとは。

松島)今進めているところで、まだハッキリとしたことは言えません。ただ20?30代へのアプローチということでは、例えば携帯電話といった新しいメディアなどを媒体として、花の効用などをビジュアル的に伝えていきたいと考えています。国内ではチョコレートメーカーの仕掛けが成功して、すでに「セントバレンタインデー(St. Valentine's Day)」にはチョコレートのプレゼントが定例化していますが、ご承知のように日本以外の国では花がプレゼントに用いられています。まさに、チョコレートメーカーのマーケティングの勝利といえるもので、残念ながら、これまでの花き市場にはマーケティングという概念がなかったといえます。その意味で、花育と合わせて20代?30代をターゲットに、例えばアパレルやレストラン、量販店などとコラボレーションしながら、700?1000円の価格帯で魅力的な商品をつくることで、自分用或いはプレゼント用の花き市場を創出していくことも考えていく必要があります。2009年7月に、同様なコンセプトでお花の自動販売機「ココハナ(cocoHANA)」が発売されています。日本語には感情を表す表現が非常に豊富です。それを利用して、自販機では気持ちに合わせて花を選べる仕組みになっています。モニター画面を見ながらボタンを押すだけで、気持ちやシーンに合ったお花が購入できるものです。

---- すでに政府が「花き産業振興方針」を取りまとめているようですが、海外での先進的な取り組みなどはありますか。また今後、国内の花き産業の高度化およびマーケットでの新しい需要創出の上で、パッケージング技術や包装資材・機器、デザインなどの役割は大きくなると思いますか。

松島)イギリスではチェーンストアのテスコをはじめ各社が競って店舗入口付近に大きな生花コーナーを設けています。テスコモデルとして、顧客ニーズをとらえた商品から店舗設計、さらには鮮度保持を意識したロジステックまでつくり上げており、ここ15年くらいで約3倍の売上げを実現しています。その点で、国内の花き産業は非常に遅れています。先ほど触れたマーケティングはもとより、種苗から生産、流通、加工、小売まで、残念ながら、まだ''花き産業''とはいいがたい現状であると思っています。ヨーロッパをはじめ海外では鮮度保証販売(7?10日)がすでに定着しています。そのための、花き規格やロジスティクの整備が進んでいるのです。先ほど触れましたが、2010年4月からの「花き産業振興方針」が農水省により策定されています。種苗から生産、流通、加工、小売までの一貫した「花き産業振興方針」によって「品質管理の徹底やトレーサビリティの確保」「消費者ニーズの把握」「環境配慮」「流通整備」などが進むことになります。こうしたロジスティクの整備が進み、例えばトレーサビリティが確保されることで、ネーミングなどをうまく使い産地の特徴をブランド化することなどもできます。いうまでもなく、花き輸送での鮮度保持技術や容器や包装、ネーミングやデザインなど、今後の花きマーケットでのパッケージングの役割は大きいと思います。