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World View

創造的なサステイナブル・パッケージとは?

※今月はインタビューをお休みし、特別編として「WORLD VIEW」を掲載いたします。

 ブラジルのリオデジャネイロで2012年6月20日から本会合が始まる「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」に、様々な声が寄せられている。リオでの会議では、目下の深刻な環境問題への対応を念頭に置くだけでなく、「私たちが望む未来」がテーマに掲げられているように、人類と地球のあるべき姿を展望した討議を行うことが大きな焦点となっている。
 「人類と地球のあるべき姿」などと言うと、包装など影の薄いものに見えてしまうかもしれないが、逆に言えば生活実感のともなわない討議に何の意味があろうか。あらためて、私たちは東日本大震災を通じて、包装が大切なライフラインの1つであり、文化的な生活の上で欠かせないものであることを実感した。
 図らずも時同じく、軌を一にして「SAVE FOOD」のような国際的な取り組みが始まった。例えリオでの会議に"包装"の出る幕はないとしても、「私たちが望む未来」とのテーマをしっかりと手もとに引き寄せて、かつて掲げた特集テーマ「創造的なサステイナブル・パッケージを求めて」の議論を再び開始したい。
 今回は、国連開発計画(UNDP)総裁のヘレン・クラーク女史が「リオ+20」の意義を踏まえた呼びかけを、若干の加筆のみでほぼそのまま紹介する。その文中から「包装」という文字は1つとして見つけることはできないが、どこを取っても「包装」とかかわりのないところはない。どうか、生活実感に引き寄せて読んでほしい。
 冒頭、クラーク女史はいう。「2012年6月、世界の指導者がブラジルのリオデジャネイロに集まり、地球の未来を守り、すべての地域で未来の世代が健康的で充実した人生を送れるようにするために、世界がどのような行動を取るべきか、新たな合意を見出すために話し合う。この問題は、21世紀の開発上の最重要課題である」と。
 
 持続可能性は、平等に関する基本的な問題である"公平性"と"社会正義"、"生活の質の改善"をさせる機会の拡大と切り離せない関係にあることを示すことで、様々な困難な課題におけるグローバルな論議に新たに重要な貢献をするものである。
 持続可能性とは環境だけの問題ではなく、環境が主たる問題ですらない。持続可能性とは要するに、私たちが取る行動のすべてが今日の地球上で生きる70億の人々、さらには今後何世紀にもわたって生きる多くの世代に影響を及ぼすという前提のもと、どのような生き方を選択するのかという問題である。
 現在および未来の世代のために人間の自由を拡大しようと思えば、環境の持続可能性と公平性の関係を理解することが欠かせない。過去数十年、人間開発の状況は目覚ましい進歩を遂げてきたが、その流れを継続するためには、環境上のリスクと不平等を緩和すべく、世界規模で思い切った行動を取る必要がある。
 人々が、地域社会が、国が、そして国際社会が、環境の持続可能性と公平性を向上させ、しかもその両方の取り組みの相乗効果を生み出すための方策を示したい。国連開発計画(UNDP)が日々活動している176の国と地域では、多くの恵まれない人々が二重の不利益に苦しめられている。そのような人たちはとりわけ、広い意味での環境破壊の打撃を被りやすい。環境破壊による悪影響がひと際大きい上に、問題に対処する手段を得難いためである。
 そういう人々は、屋内の空気の汚染に始まり、水の汚染、衛生環境の悪さに至るまで、身近な環境に対する脅威にも晒されている。様々な予測によれば、重大な環境上のリスクを減らすことを怠り続け、社会の不平等の拡大を放置し続ければ、世界の人口の過半数を占める貧困層の生活状況が改善してきた数十年の歩みが減速しかねず、殊によると人間開発のレベルの国による格差が縮まってきたプロセスが逆戻りする恐れまである。
 このような状況を生み出しているのは、力の不均衡が甚だしい現状だからである。新しい分析によれば、国レベルでみると、力の不均衡とジェンダーの不平等は、清潔な水と良好な衛生状態の欠如、土壌の劣化、大気汚染と屋内の空気の汚染による死亡と関連があり、所得の不平等に纏わる問題を増幅させている。ジェンダーの不平等も環境問題と相互に作用し合い、状況をいっそう悪化させている。
 グローバルなレベルでは、国際機関などの国際的なガバナンスの仕組みのもと、途上国の声が弱まり、立場の弱い人々の意向が無視されるケースが多い。しかし、公平性と持続可能性が欠如した状態を避ける道はある。人間開発という広い視野に立てば、化石燃料を原動力にした成長は、必ずしも生活を向上させる前提条件ではないのである。
 再生可能なエネルギーや水、良好な衛生環境へのアクセスやリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)などに関する、平等を高めるために投資することにより、持続可能性と人間開発の両方を高められる可能性はある。市民社会とメディアの活性化を支援するなどして、説明責任と民主的プロセスを強化することによっても、結果を改善できる可能性がある。
 そうした取り組みを成功させるためには、地域社会のマネジメントおよび、あらゆる層の人々、とりわけ恵まれない人々の声を反映できる制度、そして政府機関や開発援助機関の垣根を越えて、予算とプロセスを調整する横断的なアプローチが求められる。「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」は、そのためにどのようなアプローチを取るべきかについて、認識を共有する上で重要な機会となる。
 この点について、平等への配慮を政策とプログラムに織り込み、法的・政治的な変化を実現する力を人々に与えるようなアプローチが極めて有益である。そのようなアプローチを取ることにより、好ましい相乗効果が発揮される可能性があることを実証する、国レベルの事例が世界から続々と集まってきている。
 環境保護と社会的保護の費用も含めて、今後の開発に必要とされる資金は、現在の政府開発援助の総額と比較にならないほど膨れ上がるだろう。例えば、CO2排出量の少ないエネルギー源の整備に今日費やされている資金は、本来必要な金額に関する最も少ない試算値と比べても、わずか1.6%にすぎない。
 また、気候変動への適応と影響の緩和のために費やされている資金は、必要額の試算値の約11%に止まっている。新たな資金調達手段の確立が望まれる。市場メカニズムと民間資金の役割は不可欠だが、積極的な公的投資によって、それを補完・強化する必要がある。資金不足の状況を解消するためには斬新な考え方が欠かせない。
 緊急性の高い環境上の脅威に対して、公平性を失わずに対処するための新しい資金供給源を確保することに加えて、公平性を高め、恵まれない人々の発言力を強めるための改革を提唱する。持続可能性と公平性の欠如という重大な課題に取り組むために資金が用いられるべきであり、不平等を拡大する結果を招くような資金の用いられ方は避けなければならない。
 全ての人に機会と選択肢を提供することは、人間開発の最も主要な目標である。我々は全体として、現在と未来の世界中の最も恵まれない人々に対して責任を負っており、現在が未来の敵とならないようにする道義的責任がある。
(秋月弘子/二宮正人監修「人間開発報告書」阪急コミュニケーションズ)
 
(※)人間開発の基本的な目標は人々の選択肢を拡大することである。これらの選択肢は原則として、無限に存在し、また移ろいゆくものである。人は時に、所得や成長率のように即時的・同時的に表れることのない成果、つまり、知識へのアクセスの拡大、栄養状態や医療サービスの向上、生計の安定、犯罪や身体的な暴力からの安全の確保、十分な余暇、政治的・文化的自由や地域社会の活動への参加意識などに価値を見出す。開発の目的とは、人々が、長寿で、健康かつ創造的な人生を享受するための環境を創造することなのである(マブーブル・ハック/パキスタンの経済学者、1990?1995年まで「人間開発報告書」の執筆責任者)。