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World View

変化への対応がビジネスの基本

金子俊治氏

(かねこ しゅんじ)
1971年、東洋製罐株式会社に入社。1995年、技術本部生産技術部主席部員。1999年、千歳工場長。2000年、取締役。2002年、技術本部長。2003年、常務取締役、生産本部本部長。2005年、取締役副社長、経営企画・管理・生産・開発本部統轄。2006年、代表取締役副社長。2007年、総合リスク対策委員長。2009年、代表取締役社長、現在に至る。

----- 本誌では創刊(2009年4月)以来、国内包装産業の将来を展望する上で最も重要なテーマは、加速するグローバリゼーションと国内における人口減少や高齢社会の現出に象徴される、需要構造の変化にともなうプロダクトマーケットの変貌にあると考えています。その意味で、米国でのリーマンショックに端を発した世界同時の経済危機が、そのマーケットの変貌ぶりを加速度的に現在化させつつあるとみています。
 それだけに、現今の景気後退が単なる波の谷間と呼べるものではないことは、誰もが今までにない違和感を持って認識しはじめています。もちろん包装産業だけに止まることではありませんが、「座して嵐の過ぎるのを待つ」といった守姿に終始していては到底、この谷間から抜け出せることはないでしょう。特に内需にあっては、この需要構造の変化を見据えた産業及び企業における構造変革といったことが求められているはずです。

金子)当社でもそのことを強く実感しています。ご承知のように包装産業は「良くも悪くも景気動向の影響を受けにくい」と言われます。他の産業に比べれば、今回の不況にもそのような傾向はありますが、消費者物価指数がマイナスを示すなど、国内のプロダクトマーケットは戦後初のデフレに入りました。当社の売上推移などをみても、やはりこれまでにない不況の深刻さといったことを感じられます。
 内需を考えれば、2005年をピークに人口は減少へと転じており、すでに超高齢社会(65歳以上が総人口の25%以上)の入口にも差しかかっています。いうまでもなく需要は確実に縮小する方向で、高度経済成長を引きずったこれまでの延長線上では、やはりデフレは避けがたい状況にあったと言えるかもしれません。ただ、このままでは不況の波にのまれるかたちで、出口のないデフレスパイラルへと陥っていくことが心配です。
 激化しつつある価格競争から抜け出し、価格から価値(質)へと競争原理を変革すべきだと思います。新しい価値創造を志向することで、国内のプロダクトマーケットが活性化することを望んでいます。その点で、私はパッケージの果たす役割は非常に大きいと考えています。もちろんパッケージ自体の持つ性能や機能、差別化なども大きな役割ですが、単にサプライヤーとしての存在に止まらず、よりお客さまの側に立った生産や物流のトータル的な効率・合理化なども視野に入れたといった、パッケージングでのソリューションを志向しています。例えばインプラント化といった点でも、需要構造の変化に対応した効率・合理化を進める上で、まだ課題は多いと認識しています。
 私は、こうした変化への対応こそがビジネスの基本であると考えており、基本に立ち返る大切さを感じています。もちろん新たな需要の拡大を考えれば、東アジアを中心とした海外に求める以外にはありません。そこでも、やはり強みを発揮できるのは価値(質)競争であると考えています。私は、日本が培ってきた知恵やチームプレー、きめ細かさなどは、世界でも優位性を持っていると思います。当社の様々なパッケージング技術や製品なども、そうした日本の強みが生かされたものです。

----- 確かに「TULC」などはその代表例として、まさしく世界に誇れる技術の1つといえますね。

金子)先にも触れましたが、これまで日本の風土の中で培ってきた技術やノウハウは国内だけでなく、海外でもすでに十分な優位性を持っていると思います。ゆえに基本に立ち返り、プロダクトマーケットの変化だけはなくグローバリゼーションの中で、国や地域によって異なる市場性などを的確に捉えた対応をしていくことで、日本の包装産業が提供できるソリューションは高く評価されると思います。
 どこかで聞いたことなのですが、「CHANGE」から「T」を除けば「CHANCE」になるというものです。確かに「G」から「T」を除けば「C」となりますね。そして、「T」は何かというと「タブー(taboo)」です。つまり、こうした変化の時をチャンスに変えるには、タブーに縛られないことだということでしょう。当社に「タブーはありますか」と聞かれたことがありますが、私は「ありません」とお答えしました。なぜならタブーは人がつくるもので、会社がつくるものではないと思っているからです。

----- 人の持つ最大のタブーは自らが心につくる臆病の壁であると思います。やはり企業の要は人であり、金子社長自らが日々自身のタブーを乗り越える挑戦をされているから感じることでしょう。

金子)ビジネスといっても基本は人です。"変化"を"チャンス"に変えるのも人にしかできません。いかに一人ひとりが自身のタブーを乗り越えて、有為な人材として成長していけるのかと考えています。それを一人ひとりの努力だけに頼るのではなく、それを支える組織づくりやチームプレーを上手く生かしていくことが大切だと思います。それを、またグループ全体のシナジーにつなげていきたいと思います。

TULC(Toyo Ultimate Can)
PETフィルムを内外面にラミネートした、ストレッチドローアイアニング成形のスチール缶。潤滑剤・洗浄工程・廃水処理・内面塗装が不要なため、CO2排出量も大幅に削減できる。